お姫様の作り方

『あ?どこにだよ?』


ごくごく当然な反応だ。だって私はどこにとは言っていない。


「会いたくない…。」

『誰に?…つーかお前、泣いてるな。』

「…泣いてない。」

『声で分かるっつってんだろ。お前どこにいるんだよ?』

「家…。」

『って遠いんだよな…どこか知らねぇし。お前、出て来れねぇのか?』

「…無理かも。猿田さんの監視厳しくなっちゃったし。」

『監視?』

「この前逃げ出したから…。」

『あーなるほど。じゃあもうだめかもな。んじゃあ…仕方ねぇから頑張って喋れ。ちゃんと聞く。」

「…会いたい…。」

『え…?』


するりと口から滑り落ちた言葉。それはあまりにも素直な想い。


「…歌が聴きたい。」

『生でってことだよな。』


コクンと頷く。目の前にはいないけれど、多分〝空気〟で伝わっている。


『…不法侵入はできねぇよ。俺はピーターパンじゃねぇ。』

「会うために飛ぶって発想になるんだね、由貴。」


ポロリと零れた涙を拭って、少しだけ笑みを浮かべる。この前、バルコニーで魔法の絨毯を思い浮かべた思考に似ている。物語は違うけれど。


『じゃねーと無理だろ。お前んち、バルコニーとかある感じのでけー家だろ?』

「…私の部屋にバルコニーはないわ。」

『じゃあ魔法の絨毯でお姫様奪還とはいかねぇわけか。』

「え…?」


突然由貴の口から出た〝魔法の絨毯〟という言葉にドキっとする。
…由貴は私の心を見透かすことができるのだろうか?