お姫様の作り方

* * *


それから2週間。あの日歌った心地良さを忘れられないでいた。
(ちなみに私はあの後自腹でお金を払い、猿田さんには『夜の街を探検してみたかった』と嘘を吐き、猿田さんも私が車から飛び降りたなんてことをお父さんにばれたらまずいからこのことはなかったことで、ということでまとまった。)


「…聴きたいな、あの声…。」


コンコン、と部屋のドアがノックされた。


「はい。」

「茉莉花、入るぞ。」

「はい。」


ガチャリとドアが開いて入ってきたのはスーツを着たお父様。


「お父様…。」

「急な話だが、今週末のパーティでお前に会わせたい人がいてな。」

「え…?」

「金原くんのところの末息子なんだが、お前の2歳年上だそうだ。」

「金原さん…。」


そう言われて思いつくのは金原グループという、うちのグループとよく提携して事業をおこしている企業だ。
…つまり、これは遠回しの〝縁談〟ということになる。


「お前のことは別のパーティで知っているらしく、ぜひ今度ゆっくり話をしてみたいと言っていてな。
年の割に非常に大人びていていて、とても明るくて爽やかな良い子だよ。お前の将来のためにも…。」

「…分かりました。今週末ですね。」

「くれぐれも粗相のないようにしなさい。」

「はい。」


お父様が出ていった部屋は穏やかだった。
音は何もしない。2週間前の音が遠くなってしまった、そんな気がした。