お姫様の作り方

「…ったく勝手なことばっか言って…。」


あたしは袋を開けてパンを一口かじった。ピーナッツクリームが甘くて美味しい。


「はぁ…。」


思わず溜め息が出た。明日美も杏里も悪気はもちろんないのだろう。それに二人とも彼氏がいる。だからこそ、いわゆる恋バナにあたしを混ぜたい…くらいの気持ちなんだとも思っている。
でも肝心のあたしが興味を持てないんだから仕方がない。興味がないし、それにそもそも…


「…勝手にイメージ抱きすぎ。
何が『イメージと違う』よ。知るか、イメージなんて。」


周囲から散々言われてきた『イメージと違う』という言葉。
勝手に見た目で判断されて、あたしが好きなように好きなものを食べているってだけで(確かに一般的な子よりははるかに摂取量が多いのは認める)、それぞれがあたしに見ていた〝白雪姫像〟をあたしが壊したと思い込む。
―――こんな状態で、あたしが誰と恋に落ちるっていうんだろう?


パンをもう一口放り込む。ピーナッツの甘さは丁度良い。だるい甘さは苦手だ。


ふと、白雪姫のストーリーを頭の中でなぞる。


「…あ、原作はあんまりロマンチックじゃないんだっけ…?」

「王子様のキスで目覚めるわけではないですからね。」

「っ…なんで…!」


この声は間違いない。振り返った先には、〝王子様〟がいるはずだ。…いた。
悔しいくらい乱れない表情と容姿がなんだか妙にいらつく。