その夜。 妃絽は必要なモノをまとめたボストンバッグを片手に、時越池の前にいた。 手には両親と櫂人、妃絽の四人で撮った最初で最後の家族写真がある。 ふと、妃絽は今まで暮らしていた時の都を見渡した。 夏樹達には別れは言っていない。 その方が良いと感じたからだ。 視界が涙で滲む。 「よし、行くか!」 妃絽は涙を拭うと家族写真をボストンバッグにしまい、池に飛び込もうとした。 その瞬間――。