それでも、今の妃絽にはどちらか一つを選ぶなんて出来なかった。 「…そっか。今は選べないよね。でも、これだけは忘れないでね、姉さん」 「何?」 「俺達は姉さんが帰って来るのを待ってる」 櫂人は笑みを浮かべながらそう言うと、玄関から出て来た両親と共に帰って行った。 妃絽はベンチに座ったまま、帰って行く三人の背中を見送っていた。