目の前に自分を必要としてくれている家族がいる。 それは妃絽がずっと望んでいたことだった。 しかし、妃絽は――。 「ごめん、櫂人。少し考えさせて」 結論を出せなかった。 施設を出て、今まで離れていた家族と共に暮らすか。 家族とは暮らさずに、施設で暮らすか。 と言っても、施設は高校を卒業したら、出て行かなくてはいけなかった。 そう考えると、家族と暮らした方が良いのかもしれない。