お兄さんはクスリと笑った。

「君に会えて良かったよ。」

良かったわ、お兄さんが笑ってる。

お兄さんには笑みが一番いいわ。

「笑えるなら笑った方がいい。」

あたしは笑うのも泣くのも怒るのも

苦手だった。

今も難しくて出来ないのもある。

「人生は自分から掴み取るものです!!

お兄さんにはまだまだ時間があるのですから

いくらでも頑張れるのですよ。

それでは、Good Luck!!」

大変、もうこんな時間ね。

寄り道は良くないわ。

真っ直ぐ家に帰るはずがこんなことに

早く帰って夕飯のお支度をしなきゃね。

兄ちゃんはまだ帰って来ないかな?

だとしても、ジョセフィーヌがお腹を

空かしてあたしの帰りを待っているに

違いないわ。

「ありがとう」

遠くから聞こえるありがとうにお兄さんの

考え方がプラス思考になりますようにと思った。

家の兄ちゃんのポジティブ思考を少し分けて

あげたいぐらいに。





「あの子、可愛かったな。」

夕日に染まる街を背に走って行くさっきの子。

あれはグッときた。

「そういや、名前聞いてなかった。」

名前ぐらい聞いておけば良かったと

後悔したのは遅かった。

手にはさっきあの子が差し出してくれた

可愛い柄のハンカチを持っていた。

いつかまた会えるだろうか?

その時には今度こそ名前を聞きたい。

それに、ハンカチも返したい。

きっと、もう一度会えますように。

そのハンカチに願掛けをして帰った。