愛想よく笑って見せた。
顔に張り付いた愛想笑いはいつか本物まで
飲み込んでしまうのかもしれない。
仮面をして本物の自分を永遠に封じる。
「まぁ、それだけでもなくてさ今日は少し
気分が沈んでるんだ。」
夕日に染まる景色を見つめるお兄さん。
どことなく誰かに似ている?
気のせいだよね。
その美しい顔に影を落とす。
「良かったらお聞きしましょうか?
そういうブルーな日は誰かにぶつけて
しまうのがいいそうです。」
「君にぶつけていいの?」
あたしは丈夫だから大丈夫だ。
「ええ、こう見えて体は丈夫な方です。
内心面も強化しているので多少のことでは
挫けません。」
鼻息を荒くして答えるとお兄さんはまた
目を細めて笑った。
「実はさ、弟に会いに来たんだけど逃げられて
たんだよね。」
「そ、それは何と言う兄不孝な弟君!!」
こんなに美しいお兄様に何てことをするのだ。
「昔はすごく懐いてくれてたんだけどね。」
「あ・・・あたしも実は兄が居ります。」
確かに、あたしも兄ちゃんに会ったら逃げたくなるよ。
でも、このお兄さんすごく良い人そうだ。
「そうなんだ、それじゃあ気持ち的には通じる
ところがあるかもしれないね。」
「もしや、お兄さんはジャングルに旅に出かけた
ことがありますか?」
ふんと鼻息を噴出する。
「えっ・・・ないけど?」
「そうですか、ではお兄さんはオカメインコと
ラブソングを歌ったご経験は?」
「普通に考えてないよね。」
にっこり笑うお兄さんにやはり普通の人では
ないかと思った。
弟君は一体このお兄さんのどこに危機感を
感じて逃げているんだ?

