Hurly-Burly3 【完】


真面目な回答をそんな返しで来るとは恐るべき

イケメンさん。

「勘違いだよ、死のうとはしてない。」

口元を柔らかく上げると彼は目じりを

細めて手すりに背を向けてあたしを見た。

「そ、そうだったのか、それは失礼しました。」

頬に残る涙の痕は?

「あ、あの、ハンカチ使いますか?」

ポケットからクマさんのハンカチを

取り出して差し出した。

「えっ?」

不思議そうな顔をする彼に自分の頬を指さした。

すると、彼は慌てて頬に手を伸ばした。

「悲しいことでもあったのですかね?

そういう時は楽しいことを思い浮かべると

いいらしいです。」

ここ最近のあたしは可笑しい。

前ならこんな他人ごとに首突っ込んだり

しなかったはずなのに。

この人が命を絶とうとしているのかと

思った時は無我夢中で止めなきゃと思った。

「ふっ」

口元を抑えて笑うお兄さん。

どう見てもあたしより年上そうだ。

「どこがそんなに可笑しい!?」

人の顔を見て笑い出す始末だ。

とっても失礼である。

「ううん、君さっきから面白いから。」

ど、どこも可笑しくない!!

元気づけようと必死に考えているのだぞ。

「悲しいことか、それもあるかもしれないけど

今のは多分これかな?」

そう言ってお兄さんが手に持っていた

可愛らしい絵の本を見せてくれた。

どうもそれはももっちが言う漫画という

類のものらしい。

タイトルには『セバスチャンの犬』という

もので首を傾げてその絵をよく凝らして

みて見ると草原に眠る犬とおじいさんという

シュールな絵だった。