そうだ、わいのためにひーさんが編んでくれた
透真とお揃いのマフラーを置いてきぼりに出来るか!!
待っとれ、わいのマフラー!!
絶対に取り返しに行くで。
細かい作業でとても普通の毛糸では出来ないものを
帽子とセットで作ってくれたひーさんに申し訳がたたん。
「ほれ、そこどかんか!」
意を決して出たものの猫は興味なさそうに師匠を
見てまた寝伏せてしまった。
「どいてや!」
「ここは、あたしの陣地よ。」
「そんなの知らんがな。そこにわいのマフラー
があるんや。返してくれ!」
「やーよ、あたし今から寝るんだもの。」
「頼みます。」
師匠はプライドを捨てて土下座した。
「何で、そこまでそのマフラー大事なの?」
どうも彼女は野良猫らしい。
「わいの大事な家族がわいのために作って
くれた宝物やからな。」
「何それ、穴空いてたわよ。」
「ホンマか、毎日これやったからな。
ひーさんに直してもらうわ。」
「飼い主さん?」
興味なさそうにだけどマフラーを見つめる
視線を送る猫に師匠は胸を張った。
「せやから、わいの家族や。
最初は友達やったんやけどな。
いや、今かて透真とはマブダチや。」
「何か、ムカつくわね。」
「幸せおすそ分け出来んくて悪かったな。」
「そういうんじゃないわよ。」
ふてぶてしい猫に師匠はあまりいい気がしなかった。
「ほな、帰るわ。あばよっ!」
「変な鳥・・・」
そして、師匠が振り向き間際ほっぺを赤くして照れながら、
「きっと、分かるでいつか。
家族が出来ると幸せんなるんや。
また、遊んでやってもええけどな。」
言うとバサバサ飛んでいった。

