伊織君明らかに嫌だなって感じにあたしを見て、
大きな大きなため息を吐く。
「な、何さその態度は!!」
伊織君、さっきは一緒に逃げてくれた仲じゃないか!
「鈍くて鈍くて勘の悪いお嬢ちゃん」
「それは嫌味か!?」
け、けしからんぞ!
「さすがの俺もドキッとしちゃったの返して
貰いたいじゃねぇの」
「伊織君、冗談も休み休み言えって言葉を・・・」
「お前がな。」
伊織君の瞳が恐ろしい。
ゾワリと寒気がしたのは気のせいだ。
そろそろ、冬眠支度をせねば冬は乗り越えられないわ。
「完全に現実から逃げたな。」
ユウヤが苦笑いをする。
「ヒヨリン、伊織に何かされたんだな!?」
「何言ってのナルちゃん。俺が襲われそうだったつうの。」
「どこが!?伊織君の色気で気絶しそうだったのは
あたしだぞ!精神的な慰謝料払え魔導師!!」
もうこっちはどれだけ心臓止まるかと思ったことか
ちっとも知りもしないで何なの!?
大体、伊織君だけじゃないよ。
ナル君もちぃ君も何だかんだで一番あたしを
オロオロさせる天才だよ君たちは!!
「それで今度こそ『ブラックペッパー警部の
ニューヨーク殺人事件』を買いに書店へ行くんだ。」
みんなと一緒に居ると心臓がいくつあっても足りない
気がするからあたしの死因は心不全か何かハートの
トラブルな気がします。
「何だよ~そのタイトル。慰謝料じゃなく買ってやるよ。」
「いや、慰謝料として買うんだ!」
それから、伊織君と口論が続いた。
――――――・・・・
「話がすっかり変わってないか?」
「ヒヨリン、いろんな本読むんだな。」
「日和ちゃん、結局肝心なところ聞けてないよね。」
「・・・ひよこ、危ない。」
その直後、ビシャーっとテーブルに置いてあった
ちぃ君のオレンジジュースを零して馨君に叱られた。

