ハンカチをポケットから出してちぃ君の額に

浮かぶ汗を拭いてあげる心優しいあたし。

まさに、素敵レディーへと一歩進んできてる。

「待ってたとはどういう・・」

「そのまんまの意味だ。」

「あたしが帰っているとか思わなかったんですかね?」

ちぃ君、意外と身長高いよ!

いや、意外とじゃないけどさ。

もっとあたしに優しい登場人物出てきてよ。

背伸びして踏ん張るあたしにちぃ君がくしゃりと

表情を崩して口元に手を置いて震える。

わ、笑ってやがるぞ!

「鼻息・・プッ」

失礼だぞ!あたしの頑張りを笑うなんて薄情者!

でも、ちぃ君笑ってる。

こんなに笑うことは稀だ。

京君並にちぃ君は笑わないから滅多にお目にかかる

ことはないのである。

「そんなに変な顔してた?」

う~む、表情は難しい。

まだまだ勉強不足なようだ。

練習は毎日欠かさずしているのだけど、

足りないようでまだ頑張らなきゃいけないらしい。

「か、カワウソ」

「はい?」

ちぃ君、やっぱり君は天然記念物だ。

「カワウソに似てる。」

「な、何故そのチョイス!?」

意味が分かりません。

カワウソってあんまり見たことないよ。

ちぃ君の会話についていけません。

シークレットなカワウソを今度動物図鑑で

確認してやろうと思いながら、ちぃ君あたしを

待ってたとか言ってたような。

「行くぞ。」

えっ、いきなり何を言い出す!?

あたしの手をグイっと引っ張る。

でも、ちゃんとあたしの下駄箱に近づいてる。

ちぃ君の行動にアタフタするあたしとスタスタ

足を進めるちぃ君に連行されるまま下駄箱に着いて、

スニーカーに足を入れる校舎を出て裏門へと進んでいく

ちぃ君を目の当たりにした。