た、確か、帰ると仰っていたような気もするんです。

いつもは睡眠と甘いものをたっぷりと吸収している

ちぃ君が目の前で無表情にあたしを見下ろしていた。

「や、やぁ!」

「・・・・・お前、危ねぇぞ。」

真顔で言うちぃ君に首を傾げる。

な、何言ってんだ!?

まだ寝ぼけてるわけじゃあるまいな!!

「えっ?」

「前見ねぇと危ねーだろ。」

いや、ちぃ君がまともなこと言ってる。

あたしすごい感動している!

「す、すまないね!ちぃ君にぶつかってしまったようで

お怪我はしてませんかね?」

「・・・してねぇ」

「そうですか、良かった。」

一瞬、ちぃ君が言葉を詰まらせたような気がするけど

勘違いだよね。いつもこんな感じだしね。

「ところで、何故ここに居るんだ?

みんなとてっきり帰ったのか不良メンバーズと

一緒に居るんだとばかり思っていたけど?」

ちぃ君はまたソファーでスヤスヤ寝てるものを

想像していたけど、今のちぃ君は漆黒の瞳を

キリッとさせていて美貌に磨きがかかる。

なんて綺麗な顔してやがるんだコヤツめ!!

羨ましいぞこの野郎!あたしのその美貌少し分けろ!

読みかけの本の間にしおりを挟んで鞄の中に仕舞った。

集中力が一気に分散してしまったよ。

恐るべきちぃ君パワー!

「それはこっちのセリフだ。」

「えっ、あ。サユならマコ君と帰るって。

田中は兄ちゃんが連行して行ったとかで、

あたしも今から帰るところだ。」

それでちぃ君はどうしたのって聞こうとしたら、

ちぃ君の額に浮かぶ汗がキラリと見えた。

「お前、待ってた。」

そう呟くちぃ君は心なしか少し疲れているように

見えて、制服のポケットからハンカチを取り出そうと

手を突っ込んだ。

今日のちぃ君は何か違って見えた。