急いでるわけでもないから廊下をゆっくり歩いて、
階段を下りて玄関に向かった。
そういえば、先生から本を借りていたな。
暇が出来たら読む時間に当てようと思ってたから
鞄にまだ入ってるはずだ。
鞄を開いて本を手にするとワクワクした。
本は知識が豊かになると小学校の時よく先生が
口を煩くして言っていたっけ?
小学生の時から本は大好きだった。
よくお兄ちゃんや兄ちゃんが読んでいたのを
真似してあたしも読んだものだ。
最初の内は難しくて読むのに苦労したものが、
一つまた一つと読み進めていくと知識が増えて
最初分からなかった言葉が次には頭のどこかに
入っていて面白く思った。
パタリと表紙を開いて目次を目で追う。
足は進めたままで自分の下駄箱を目指している。
ペラっとページを捲って次のページへ進める。
どうもあたしは集中すると周りが見えなくなる
ことがあるとサユによく言われる。
妄想然り、勉強してる時も集中してると
自分の世界にすっかり入ってしまうとか。
自分ではそんなつもりがないのに、人の目からは
そう見えてるらしい。
主観と客観は違うことが多いから気を付けないと。
自分の下駄箱は慣れたせいか本を見たままでも
たどり着くことが出来るわけでまた次のページを
捲って文字を目で辿る。
それから、また次のページが気になってページを
捲ってると2年生の下駄箱にぶつかって態勢を崩した
ものの、すぐに態勢を立て直して次のページを捲る。
次はぶつかるものかと障害物を避けるも視線は
本から離れることはなく、次のページを捲る。
ボスっと何かに当たってまたぶつかったかと
思って一度視線を上げる。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
本に視線を戻して思考回路をストップさせた。
え、えっ、えっと・・・?
何でいるんだ!?
本からまた視線を外して目の前に立つ人の顔を伺った。

