ポカーンとあたしを見る伊織君に首を傾げた。
「それはこっちのセリフかもしれねぇ~な。」
伊織君はいきなりそんなことを言い出した。
ビックリして伊織君の顔を見つめる。
「丁度、つまんねぇ~なと思ってたところ
ひよこのお嬢到来で久しぶりに走っちまったしな。」
「久しぶりに走った割りには結構体力あったじゃないか。」
横っ腹を押さえる伊織君は疲れてんだぞと言う。
「おめぇ抱えて走るなんてすげぇ思い出残っちまったな~」
「良い思い出だろ!美女を抱えられたんだぞ。」
「どこに居んだよ、その美女とやら。」
「こ、ここだ!」
伊織君が営業スマイルなんかじゃないような、
みんなと一緒の時にたまに笑う笑みを浮かべる。
そうやって笑ったほうがずっといいよ。
ちょっと、キュンとしてしまったではないか。
フェロモンよりこっちのがあたしはいい。
「もう一方は美男たちに捜索させっかな~」
「よっちゃんたちに?」
ものすごい申し訳ないのだが。
「とりあえず、隠れてた方がいいんじゃねぇ~の?」
「う、うむ。そうだな。」
というか、もうお腹がMAXで減ってる。
何か食べ物寄こせとお腹先輩が仰ってるぞ。
「お前が変なこと言う前に行くかな~」
「なっ!!」
伊織君が手を出してきたからもう一度手を置く。
安心しきって伊織君に手を委ねた。
それが間違いだったと気付くのはすぐのこと。
よしっ、行くぞと気合を入れていたあたしの手を―――――
伊織君が顔に近づける。
そして、色気たっぷりの笑みを浮かべて手の甲に
―――――キスを落とした。
顎が外れるとはこのことだ。
腰砕けもいいところだ。
何て度肝を抜くようなことをやってのけてくれたんだ。
まるで、お姫様に忠誠を誓う騎士のごとく。
色っぽい視線にドギマギが止まらない。
「ひよこ姫自分で言ってたろ。
俺に何かあったら駆付けてくれんだろ?
だったら、その言葉そのまま返してやろうじゃねぇ~の。」
耳元で甘く囁かれて更に腰砕けになった。
フェロモン魔導師め!
これは、不意打ちの攻撃だぞ。
もうここまで来ると伊織君は天性の色気の持ち主だなと思った。

