伊織君と逃亡中真っ只中である。

あの後、追っ手が来て伊織君を急かした。

右手と左手で伊織君に誘導してもらってる

幼稚園児のようにただただ伊織君の後を必死に

追いかけるという具合に続く。

「おめぇ、何だよアイツ等。」

「あれに捕まると処刑台に登らなきゃならないんだ。

いざ、頑張れ伊織君!」

煙草をスパスパ吸ってるから日頃体力なくなるんだよ。

これで、少しは自重しろ。

飴玉ならいくらでも買ってやるからそれで我慢しろって

んだいっ!!

「鼻水垂れそうなんだけども!」

「知らねぇ~よ。」

伊織君、気にしようよ。

一瞬手を放そうとしやがったな。

だが、ガッチリホールドしてやったぜ。

逃げようたって無駄だからな!

「うわっ」

伊織君、早いよっ。

伊織君が一度止まったと同時に伊織君の

背中にあたしの可憐なお鼻さんがごっつんこした。

「痛いです。」

あたし、あれれ?

足が何か変なんだけども。

さっきから違和感感じてたの!

「ん?何だよ、俺今疲れたんだけどよ~。」

伊織君が額に汗を浮かべることなんて今まで

見たことなかったような気がする。

「えっとさ、あのですね・・・・・」

大変なことに気付いてしまったじゃないか!

「少し、休みてぇーじゃねぇ~か。」

「う、うん、あたしもそう思うんだけどさ。」

とんでもないことに気付いちまったよ。

これは世にも恐ろしいことだわ。

「どうした?」

伊織君がしゃがみながらあたしの顔色を伺う。

「大変だ伊織君!歴史的にも重大なことに

気付いてしまった。靴が消えてしまったのね。」

全然歴史的じゃねぇ~だろってツッコミをして、

盛大なため息を吐く伊織君。