9年もの間お兄ちゃんとの唯一の繋がりは
この不定期な電話だけで今や声しか覚えてない。
お兄ちゃんの写真は家中探してもあまり残されて
居なくて、あったとしても今と9年前とでは明らか
に違うんだろう。
お兄ちゃんと過ごした時間は父さんや兄ちゃんより
もずっと少ない。
『そうだな。ひーちゃんに会いたくてしょうがない。』
それでもお兄ちゃんは大和さんと会っているようで
あたしの写真を見て心癒されているとか。
大和さんは家の魔法の妖精なのかもしれない。
「何か、今日はそればっかりだ。」
兄ちゃんが帰ってからと言うもの
心休まる時間が全くない。
おまけにずっとひーちゃんひーちゃんで
もう呼ばないでくれと思うほどだ。
『ひーちゃんは会いたくないの?』
会いたいに決まってるよ。
『アメリカ来てくれればいいのに~』
そうは言っても海外ですよ。
あたしに海外進出はまだ早いのである。
せめて、大人になってからで良い。
というのは言い訳で未知なる世界は
やっぱり踏み出すのに勇気がいる。
1人で行けるのか心配である。
「そういえば、研究の資料送ったからね。」
『ああ、それね。分かった今度連絡取って見るよ。
ひーちゃんはやっぱりそういう関係のこと好きだよね。
将来はこっちに来ちゃうか?』
アメリカに行くってこと?
それはないだろうね。
だって、あたしの将来はもう決めている。
あと、7ヶ月迫ったその日にはきっと。
自分で決めたことなんだからこれでいい。
まだ猶予は残されているけども、多分あたしの
固い意志は変わらない。
これはあたしの戦いである以前にあたしの幸せ
のためであるからだ。
そのためには、諦めなきゃならないこともある。

