封印は解けない。

心にしまってあるものは簡単に零れ落ちたり

してしまわない。

それだけの強さを持とうと思い続けたのだ。

『日和ちゃん』

あの優しい声色を思い出すと懐かしくて

このオルゴールを開けてしまいたくなる。

いつか、このオルゴールを見ても何とも

思わなくなる日がやってくるのだろうか?

でもね、思い出しても寂しくならなくなったんだ。

部屋の窓から入って来る夜風はさっきよりは

心地よかった。

その時、机でケータイが震えた。

「もしもし?」

急いで出たのはそれが待ちに待った電話だったからだ。

『ひーちゃん、先週は電話出来なくてごめんな。』

仕事をしているお兄ちゃんからの電話だった。

「ううん、お兄ちゃん仕事大変でしょう?

あたしのことは気が向いた時でいいって

言ってるでしょう!!」

お兄ちゃんが体壊しちゃわないか心配だよ。

『透真、そっちに着いたんだって?』

お兄ちゃん知ってたのか?

「うん、お兄ちゃん知ってたの?」

『あ、一応ね。』

うん?

お兄ちゃん?

『どう?透真と一緒に暮らすのは7年ぶりだろう?』

「うん」

不安が一番だけど何故かホッとしてはいる。

『あー、俺も帰りたいな。ひーちゃんと一緒に

暮らすとか透真ズルい!!』

お兄ちゃん・・・・・・

「お兄ちゃんだって帰って来たくなったら

いつだって帰って来ていいんだよ?」

帰って来いとは言わない。

お兄ちゃんは望んで海外に行ったのだ。

あたしにはお兄ちゃんの意思が一番

大事だと思うからいつでも帰ってきて

いいように待っているんだ。

あたしは海外に行ったことはない。