校舎の中は全部探した。

どこに居るんだろう?

途方に暮れながらも渡り廊下を歩いていると、

非常階段の下で頬をピンク色に染めたナル君が

ボーっとしながら空を見つめていた。

「な、ナル君っ!!」

その場に両手をついて土下座の態勢で、

ナル君に頭を下げた。

「ごめんなさい。嫌な思いさせてごめんね。

えっと、あたしなんかがすいません。

あの、気付かなくてその一瞬何が起こった

のかも分からなかったのですが・・・ううん。

あたしが悪いから言い訳は言いません。」

「えっ!?ヒヨリン、何言ってんだ?

顔上げてえっと・・・・」

ナル君の顔がさらに赤くなる。

「ファーストキス奪ってしまって申し訳ない。」

ナル君の手が止まる。

「ヒヨリン、それ誰から聞いたの?」

「えっ、伊織君だけど・・?」

ナル君の顔が一気に般若へと変貌した。

「ナル君、ごめんねあたしなんかが最初で。」

あたしったらとんでもない。

修平君のファーストキスも奪ったのに、

また人のファーストキスを接触事故で・・・・

「・・・ヒヨリンで良かったよ。」

えっ!?

今、何か幻聴が・・・・

「ナル君、頭大丈夫?」

「ヒヨリン、ひでぇー」

ふわりと笑うナル君。

「あれ、さっきの口じゃなかったから。」

「はい?」

ナル君が顔をまた赤くして俯く。

「口の横に当たっただけだから。」

「ナル君?」

「ヒヨリンこそ何とも思わなかった?」

はちみつ色の瞳と視線が重なって、

熱を持ったナル君の瞳に胸がきゅんとなった。

何とも思わなかったか?

起こったことがいきなりすぎてビックリして、

地球を3周ほど駆け回りたい気分ですよ。