それぞれ個性が強い奴らが集まってるせいか、

街を歩きゃ大抵距離を置かれる。

どこに行っても嫌われ者の俺たちは世間的には

悪者というヤツだ。

それでも、俺は黒宮さんを一目見た瞬間から

あの人に付いて行こうと決めた。

周りにこんなに凄いオーラを放つ人を見たことすら

なかった。他の上と違って黒宮さんは優しい人だ。

俺らのような下にまで気に掛けるお人で俺は絶対に

黒宮さん以外の人の下に居る気はない。

そりゃ、普段はたい焼きを買い過ぎて前が見えないって

地面に転ぶような人だけど、俺は尊敬している。

「この間、あのゲーセンでモグラ叩きしてよ。」

定食屋で生姜焼きセットを頼んでせっせと鶴折り作業を

再開していると水谷さんが顔を出しに来たと言って店に

入って来た。

「よう。何だ、お前らそんなもん折って暇なのかよ。」

「違うっすよ!ヒヨリンの不治の病のためっす。」

「アイツ、そんな重病じゃねぇって言ってたぞ。

昨日の夜電話でピンピンしてるみたいだったしよ。」

ひーちゃんは病気じゃないとか。

それなら、良かったと思う。

まだ、千羽まで到底足りない。

水谷さんはテレビのリモコンを所持している。

リモコンをポチポチ押してチャンネルを変えると、

盛大なため息を吐いた。

最近、何かと忙しく動いてる。

この街は今現在5つのブロックに分かれた面倒

な作りになってる。

ここは一番安全と言われる西地区で他に東地区、

南地区、北地区、中央地区の5つがそれぞれある。

もっとも危険とされる地区は北地区で無法地帯になってる。

西地区トップの男が黒宮さんで水谷さんたちは幹部。

厳密に言うなら、黒宮さんが今現在この街のトップと

言っても過言じゃない。

その下に俺のようなのが多くいる。

ここに居るヤツも比較的穏やかな性格の持ち主ばかりだ。

昔は、この街も一つだったとかいうが今は確執のせいか、

5つの地区に分かれた勢力争いになってるのが現状だ。