ガブリ。

「痛ぇ。」

馬鹿めが!!

あたしの体に勝手に触りやがった罪だ。

そんなの序の口なんだからな!!

「血反吐吐いて死ねばいいっ!!頭付いて

土下座しろこの変態。」

口が自由になったので空気をたくさん吸う。

「百瀬、こっちの始末終わったってお前また

随分派手にやったなー。」

不良メンバーズの声!!

今、叫ぶっきゃない。

「も」

声を吐きだそうとしたら急に体が沈んだ。

「あんたはあいつ等の本性知ってるか?」

体が動かない。

頭が急にクラクラしてきた。

「世間一般にいう悪名高き西地区の統括者で、

その実態は地域の平和を守る正義のヒーロー役を

買ってるのに周りは奴らを恐れてヒーローだなんて思わない。」

何も考えられなくなってきた。

べらべらと何かを喋る男の声が遠のく意識の中聞こえた。

「あんただって一緒だろ?どうせ、その悪名が

染み付いた奴らを足蹴にあしらうに決まってる。」

あたしは一つ間違った勘違いをしていたらしい。

てっきり、彼はみんなを陥れようとする他地区の

不良だとばかり思っていた。

「って言っても、あんたには関係ない話か。

どう見たって、違う世界で生きてるもんな。」

そうだ、あたしがどんなに頑張って理解しようと

したところであたしはみんなと同じように歩んで

きたわけじゃない。

声が全然出ないし意識が少しずつ沈んでいく。

「俺はそういヤツが一番嫌いだ。」

完全にシャットアウトした。

最後に聞こえたノイズはどっしりとあたしの

胸に焼きついた。

どうやら、あたしは意識を手放したらしい。

この後、どうなってようが文句は言えない。

あたしが油断をしたせいで巻き起こったのだから、

今回ばかりは人のせいに出来ない。