クラス席の方はもうガランとしていた。

体育委員がチラホラお片付けをしている。

酒井さんがコーンを片付けている。

目が合って手を振られたから振り返した。

少しはクラスに馴染んできたようだ。

地面に転がった麦わら帽を取って、砂を

叩いてすぐに校舎に戻ろうと歩き始めた。

少しすると見知った顔を視界に捕らえた。

「しかし、今日は良く晴れて良かったですな。」

よく見るその顔は少し俯き加減に茶髪を靡かせ、

喋ってる人の顔を見ずに頷いた。

相沢ティーチャーと副校長か。

変な組み合わせだけど、大人には大人の付き合いって

いうものがある。

話は聞くつもりなんてなかった。人の話を盗み聞き

する趣味はなかった。

視界の端に屋上が移り、まだ居るのかなと視線を

移すももう姿は見当たらなかった。

忙しい人たちなのかそうでないのかイマイチ訳が

分からない。

「黒宮たちが参加することにならなくて良かったですよ。」

その言葉に麦わら帽を落としてしまった。

聞き間違いなのだと思って麦わら帽を手に取ろうとした。

「私は、ああいう生徒を野放しにする校長の意思を

理解する気にはならんのですよ。」

心が凍って行くような気がした。

「そうですか。」

な、何でそんなことが言えるの?

ティーチャーの癖に生徒を庇うことすら出来ないの!?

その根性叩き直してやるぞと思いながらしゃがんで、

麦わら帽を握りしめた。

「今日も、外部生が入り込んだらしいじゃないですか。

ああいう根から腐った奴らはとことん素行の悪さに

首を絞められるのがオチだ。」

心臓がドクリと脈打った。

こんなに人へ失望したのは初めてだった。

初めて人を許せないと思ったこの気持ちに

喉が焼きつくような感覚がして手元が震えた。

世の中は不平等だ。

世の中は外面ばかりをみて本質に気付かない。

世間の人がみんなそうであるわけないと願う

ことで希望を持っていたが、こんなに近い大人から

全ての希望を奪い去られた気がして奥歯を食いしばった。