Hurly-Burly3 【完】


きっと、マコ君は苦労するだろう。

それこそ、浮気なんてしたら確実にサユに仕留められる。

多分、そこでマコ君の生涯は閉幕するだろう。

オリンピックが閉幕するような名残惜しさと同じように、

命の灯の有り難さをそこで実感することになるだろう。

マコ君に限ってそんなことはないだろうと信じているが、

サユとマコ君はあまり大きい喧嘩をしたことがない。

小さなトラブルはあるようだったし、冷戦もいつのまにか

巻き起こってるが、それこそいつも大抵マコ君が折れる。

その溺愛ぶりはもう早く結婚しちまえと思うぐらいだ。

「マコ君と何かあったの?」

ピタリと止まるサユの動きが目の端で捕らえることが出来た。

「す、少しね、」

ああ、サユは可愛い過ぎる。

あたしが男だったらこの野郎と押し倒してしまえるほどだ。

不安そうに顔を下に向けるサユは恋する乙女だ。

「何があったの?」

そんな可愛いサユのふわっと巻かれた髪を撫でた。

「ちょっと、言い過ぎたの。」

青春を謳歌しているサユは少し潤んだ瞳で声を落とす。

「うん、それで?」

俯いた顔をふと上げるとその長い睫毛が震えた。

「あのね、マコがあたしを太らせようとするのよ。

あたしはマコに少しでも可愛く思って貰いたい

のに!!それなのに、サユこのエクレアは

行列並んで買ってきたとか言ってくるから食べない

わけには行かないじゃない。」

「サユは、いくら食べても太らないから別に心配

することではないんじゃないの?」

ガシっと肩を捕まれガクガクと揺するサユに動揺する。

「何、言ってんのよ!!あんたじゃあるまい努力して

この体キープしてんじゃない。」

あんた丸っきり乙女心を理解してないわという

サユの圧迫は恐るべきもので一瞬本当に三途の

川を渡るか悩んでしまった。

「でも、サユは幸せ者じゃないか。マコ君の愛は

底なしで恐ろしくも感じるが、サユに美味し物

食べて欲しいと思う男心も多少は理解してあげましょうよ。」

でも、サユが珍しく素直だ。

マコ君はとっくにサユにベタ惚れなのに可愛く見て貰いたい

サユの乙女心はこっそりマコ君に伝えておこう!