『ひーちゃん、赤といえばこれしかない!!』

『そうや!!女たるものこれを付ければイチコロや。』

『師匠もこう言ってることだし、兄ちゃんが貸して

あげるから必勝ひーちゃんっ!!』

何がイチコロなのかあたしには理解が出来なかった。

兄ちゃんはそれからずっと暑苦しくなるぐらい

走る時の法則がどうとか小難しい話をしてきた。

馬鹿っぽいように見えて理論的な考えの持ち主で、

物理や数学が得意だった兄ちゃんの話はあたしも

面白く聞いてしまった。

その隣でジョセフィーヌが思いっきり首を横に

振ってる気がした。

「何それ、ひよっちマジでウケるんですけど!!」

「ちょっと、センスが古い・・・」

「日和今すぐに取りなさい。」

散々の言われようなんですが!?

完全否定されるとは思っても見なかったわ。

「アント○オ伊ノ木にでもなる気?」

そうです、あたしの首には真っ赤な兄ちゃんから

借りたフェイスタオル。

麦わら帽子を被ってスタイルは農家のおばちゃん

みたいに見えるとクルミちゃんがツボに入った。

「あんた、何でこの時期に麦わら帽なのよ?」

「さっきからの視線はそれでか。」

納得出来るわ。

どうもずっと痛い視線を感じ取っていたもの。

「これも兄ちゃんが日焼け対策って言って

貸してくれた。」

「透真さんが残念過ぎるセンスの持ち主だって

ことが分かったわ。」

サユがガッカリしている。

「ひよっち、相談する相手間違えたんじゃない?」

「そ、それは・・・」

言えてる!!

兄ちゃんに相談するんじゃなかった。

絶対に、ダーリンに相談するべきだった。

「立花さん、次競技だからここはもういいよ。」

3年生の先輩に代わってもらってから、

トボトボとクラス席の方へ戻った。

その最中に赤いフェイスタオルをはぎ取られ、

手首にクルミちゃんから赤いリンゴのヘアゴム

を借りて付けることになった。

麦わら帽はまだ良しとされた。