言葉にならないというのはこのことだろう。

ダディーが嵐のようにやってきた。

部屋の扉が破壊されるのかと思った。

ベットでもそもそ動くあたしはその衝撃で

ベットから滑り落ちるところだった。

ダディーは軽々とお姫様だっこをすると、

ひーちゃんまだ熱あるんだってと聞いてきた。

この人はやることなすことが全て豪快だ。

車の助手席に乗せられてダディーの運転する

車は行きつけの工藤診療に向かった。

ダディーはこの顔で警備会社の社長をやってるのに

暇人だったりする。平日だと言うのに何をしているんだか。

子どもの頃から度々お世話になっている工藤診療。

大きな大学病院とは違い、設備はあまり整って

いないけれど、先生がとても信頼出来る人で何か

あるとよくここへやってきた。

ここに来ると大抵受付の40近くのマダム看護士の田島さんが

出迎えてくれる。

「あら、日和ちゃん今日はどうしたのかしら?」

マダム田島さんに体温計を渡された。

「熱が出たみたいなんです。」

ダディーがあたしの代わりに言ってくれた。

廊下に出ている長ソファーに腰を下ろし、

体温計をもう一度測る羽目になった。

ダディーとマダム田島さんが世間話を初めて

しまったので怠い体をソファーの背もたれに

沈めて体温計が鳴るのを待った。

しばらくすると、診察室に呼ばれた。

ダディーにまたもや抱っこされたので

そのまま抵抗せずに黙って従った。

どうもダディーは大げさ過ぎると思う。

「日和ちゃん、久しぶりー!!」

ぎゅむっとその豊満ボディーにタックル

されて仰け反った。母さんには負けっぱなし

ではあったらしいが、とても綺麗な人だ。

母さんの学生時代の友達で実家の診療を継いだ

と言われる工藤円佳先生はあたしが赤ん坊の頃

からの顔なじみだと言う。

母さんは老若男女に好かれる人で友達がたくさん

居たと言うが、その交友関係が謎だ。