おじさんはこの間もよく食べてたもんなと
言いながら裏メニューを聞いたら持ってくるよ
と言って座敷を後にした。
「お前には遠慮って言葉がねぇのか?」
慶詩にだってないと思うけどね。
「遠慮なんてしたらそっちだって
遠慮してくるのではないのか?
ギブミーおしぼり!!」
馨君がはいっと温かいおしぼりをくれた。
「女っ気が微塵にも感じねぇな。」
「もうそれで構わんよ。」
おしぼりで手を拭いて水を一口飲んだ。
そっちの方がいいっていうなら区別なんて
つけなくてもいいと思う。
それにあたしがよく食べることは知ってるだろうが。
「それで体育祭に出ないのかね?」
ユウヤとか絶対に楽しみにしてそうだったのに、
さっきの馨君の言い方といい今の現状といい。
「多分、出れそうにないかな。」
それはすごく残念だと思う。
「最近、忙しいから?」
詮索はそんなに好きじゃない。
干渉はそこまでするつもりはないもの。
「何、そんなに気になる~」
伊織君、この鉄板に頭突っ込めばいい。
「別に好きにしたらいいよ。
ただ、残念だとは思うだけであって・・」
久しぶりの会話はやっぱりテンパるものがある。
今日はちゃんとクルミちゃんと彩乃ちゃんとも
お話したし、酒井さんとも仲良くなれたと思う。
女の子と男の子という性別は難しい。
「ヒヨリン、寂しい?」
ナル君が上目づかいであたしを見つめる。
鼻血を吹き出すのをグッと耐えた。
これぞ、耐久!!
「クラスメイトが大変だ。
人数合わせに試行錯誤している。
あたしも何故か最多出場になるそうだ。」
寂しいとは多分違うと思う。
女子との熱い友情を持てた今日。
何が不安って言えば、変な胸騒ぎだけ。

