Hurly-Burly3 【完】


お店に入ってからもユウヤはずっと笑ってた。

どんだけ、気に入ったんだ。

タクシードライバーごっこ。

『お客さん終点ですよ』

がどうもツボに入ったらしい。

スーパー高速ペダル漕ぎにも満足したみたいで、

もう一回と何度も言われた。

「っらしゃい」

今日も美味しそうな匂いを漂わせておじさんが

出迎えてくれた。

「おっ、この間のお嬢ちゃん。」

「こんにちわ、お邪魔します。」

おじさんにぺこりと頭を下げたらおじさんは

お客さんに頭下げられたのは初めてだよと

笑いながら言ってた。

ユウヤの後を追いながら店内をキョロキョロ

見渡すとよっちゃんたちもわいわいしていた。

この時間帯は混むらしくてお客さんが多い。

どうも人との接触はあまり好まない。

人に触れそうになるギリギリラインを

マトリックスのようにすり抜けた。

ユウヤの後ろを通ると何となくだが空間が

作られたみたいで安心して進める。

奥へと行くユウヤはよっちゃんたちの椅子席

の不良メンバーズにお先ですと言われていた。

「ヒヨリン、着いたんっすね。」

不良メンバーズの誰かに声を掛けられた。

「ええ、ちょっと、ユウヤあたしを置いて行くな!!」

ゲラゲラ笑うユウヤの背中をボンボン叩く。

不良メンバーズに手を振りながらユウヤの

後を必死に追いかけた。

この男は何とも女子の扱いが下手糞だ。

普通は待ってあげるものじゃないの!!

確かに、気を遣わなくていいよとは言ったさ。

少しはレディーとして接しろ。

「裏メニューはな、この間慶詩があんのかって

おじさんに言ってだな」

ユウヤの話を聞きながら伝統の極秘裏メニュー

とやらがある事実を熱く語っていた。