だから、大和さんが落ち込むことはない。
『本当にそうだったらいいんですけどね。』
心配しなくてもあたしが十分甘えてる人だよ。
「大和さんはどうしてあたしのような小娘を
相手にしてくれるの?」
だって、大和さんはお兄ちゃんよりも年上だ。
20代の大和さんはあたしなんかとは比べものに
ならないぐらいの大人で母さんの敏腕秘書で
どうしたって大和さんが下手に出てあたしを
構ってくれるのが不思議でしょうがない。
『貴女が世界で一番可愛いからです。』
でも、大和さんは甘い言葉を囁くんだろう。
「そういうのは母さんに仕込まれてるの?」
全く、家の母さんときたら大和さんにまた
無理強いさせてるのね?
『嘘だとお思いですか?私は貴女が本当に
可愛くてしょうがないだけです。』
ボッと顔が紅潮していくのが分かる。
大和さんはズルい人だ。
あたしがそれで動じると思ったら大間違いよ。
「大和さん、ロリコンだと思われちゃうよ?」
『そうなってしまいますね、でも構いませんよ。
貴女のお力になれると言うならば他に望むこと
なんてありませんから。』
何てはっきりした物言いなんだ!?
「それじゃあ、我儘言ってもいい?」
『もちろん、日和様の我儘は我儘の内に入りませんよ。
どんな願いでも叶えて見せましょう。』
まるで魔法のランプの妖精だ。
「大和さんとお喋りしたいな。」
大和さんはクスリとまた笑う。
『そんなことで宜しいのですか?』
「そんなことじゃないでしょう?
お仕事暇な日に少しでもいいの。
顔を見せてくれるだけでも十分喋った気に
なるんだもの。』
大和さんの声が耳元に響く。
『明日で構いませんか。
ご一緒にお食事でもしませんか?』
スマートに誘う大和さんはやっぱり
さすが大人の男だけある。

