「そうだろ?」
男が後ろの人へ聞いた。
「そうですね、一旦帰ったみたいですけど、
戻って来て始末つけてますよ。」
どうも物騒な話みたいね。
あまり首を突っ込まない方が良さそう。
ナル君の手を握ったまま早く終わらないかなと
思いながら時計を見た。
チクタクと動く秒針を見つめる。
あの針は糸みたいに細い。
「問題ないならいいんだけどね、
その東と揉めたのは日和ちゃんでもあるから。」
いきなり呼ばれたのかと思ってビクッと肩を揺らした。
「どんなヤツだったか特徴は覚えているかい?」
目の前に座るソファーの男は優しく聞いてくる。
「スキンヘッドのハゲ田さんと鼻にピアスした
グロテスクです。」
「大体、検討ついた。」
アイツかと顎に手を添えて考えるナル男
「日和ちゃんは何もされなかったんだよね?」
「はい、田中があたしを庇ってくれていたので。」
あの時のことはよく覚えている。
何か起こりそうだったのに田中が空気を変えた。
「田中?」
「この学校に通っているあたしのお友達です。」
「田中?」
「ええ?」
ナル男がう~ん検討つかないと言う。
「この学校に田中は30人ほど居ます。」
それで後ろの人がフォローした。
「そ、そんなに!?」
田中が30人も居るのね。
パッとしない名字なのに意外と居るわね。
「隣のクラスにデブな田中が居るんだけど、
そいつじゃないよね?」
ナル男、デブって酷い。
せめても、豊かな肉体をしたとオブラートに
包んであげようよ。
「デブだなんて滅相もない。田中はイケメンだと思う。」
田中はマコ君の幼馴染なだけあってイケメンだよ。

