彼女になって下さいなんて初めて言われたわ。
顔が赤くなりそうだが、ポーカーフェイスは
崩れなかった。
「えっと、ごめんなさい。
とても有り難い申し出ではあると思うのですが、
如何せんそのステップはまだ早いと思われるのです。」
そもそも、こうはっきり言われたのは初めてだ。
付き合って下さいとも女神だと言われたのも。
「早いって望みはあるのかい?」
「えっ・・・さぁ、感情については未だに
勉強中なのでそれが理解出来た頃まで待って
頂かねばなりませんね。」
でも、よく分からない。
恋愛なんて遠ざけてきたのだ。
「ま、待つさッ!!」
「馨君、助けて!!
この人異常な人種です。
通常ならばこれで大抵身を引くはずなのです。」
みんな、何を見ているのだ。
あたしを連れてきておいて何さ。
「あ、ごめんね。
日和ちゃん、戻っておいで。」
そうしたいよ!!
でも、この人手首を掴んだまま離してくれない。
「ヒヨリンはお前になんかにやらないっ!!」
そこを救世主到来。
ナル君に反対側の手首を掴まれて綱引きが始まる。
「俺だって負けたくはないのさ!!」
ち、千切れる。
腕が死滅するのも時間の問題だわ。
「ナル君、一旦手を離して頂けますか?」
「えっ?」
ナル君が嫌だよという目であたしを見る。
にっこりと微笑んだ。
ナル君を巻き込むわけにはいかないわ。
ナル君の手が離れた瞬間男の腕をしっかり
掴んで背負い投げをした。
それに改めて室内が沈黙になった。
「女の子には優しくすると学校で教わらなかった
のですか?」
人を引っ張って手首が捥げそうだわ。

