絢とちゃんと付き合うようになった時に、

『もう少し優しくしてくれたら』と言われた。

もう2年以上も前のことだけど。

天邪鬼な性格の俺は、それを直ぐに実行に移せなくて。

色んな女の子から告白されるのは

外見とか、優等生としての俺で判断してるのが明らかで。

だから、心が揺れることは一度もなかったのに。


絢と知り合って、もちろん見た目は可愛いから文句なしなんだけど。

腹黒で俺様で短気で嫉妬深くても受け入れてくれる彼女が、

見た目を差し引いてもお釣りが出るくらい出来過ぎてて。


俺のために神様が用意してくれたのかと思うほど。

だから、彼女のためなら

例え、苦痛を味わうようなことでも受け入れるつもり。

『別れる』以外であれば。


「俺の残り2つあるご褒美の1つを消費する」

「え?」

「絢のちゃんとした、本気の気持ち聞かせて?」

「………」

「直して欲しいとこ、あったら言って」


この先の人生をずっと一緒にいるなら、

小さな歪みも訂正しておかないと、

いつかは必ずそこから大きな亀裂が生じてしまいそうで。


「じゃあ……」

「ん?」


足を止めて、彼女の方に体をしっかりと向けた、次の瞬間。