家元の寵愛≪壱≫



待ち合わせのレストランに到着。

鈴月庵の若夫婦は既に来ていた。



「すみません、遅くなって」

「いや、俺らもさっき来たところだから」



優しく微笑むご夫婦。


若旦那は日賀野 仁さん(ひがの じん)35歳。

少しガッチリとした体格で豪快な性格。

けれど、ゴツイ手から作り出される和菓子は

繊細で食べるのが惜しまれるほどの逸品。


奥さんは雪路さん(ゆきじ)33歳。

凄く小柄でお淑やかな人。

けれど、芯が強く仁さんを尻に敷いている。

この2人を見ると、

人は見かけによらないなぁといつも思う。



「若さッ……家元、そちらは?」

「今まで通り、若さんでいいですよ」

「そうはいかないだろ。正式な家元なんだから…」

「ハハハッ……俺は別に気にしませんから。妻のゆのです」

「初めまして、ゆのと申します」

「可愛らしい方ね?お若いし、羨ましいわ」

「そっ…そんな、とんでもないです////」

「私は雪路、それと主人の仁よ。宜しくね?」

「よ、宜しくお願い致します」



ゆのは少し緊張気味に挨拶をした。