家元の寵愛≪壱≫



その隣では、白いYシャツに黒いベスト姿のバーテンダーが。

私がバイトしてたカフェは18時からダイニングバーに変身し

その時間からお店に立っていたバーテンダーさんだ。


正木さんにレッスンして貰った時に何度も会っている。

そのバーテンダー近藤さんが淡い紫色のライトの中で

華麗にカクテルを作り始めた。

見事なまでのジャグリング技に会場内は大喝采。


あっという間に色鮮やかなカクテルが3種類も出来上がった。



そんな中、


「ここで新郎新婦はお色直しの為、暫く中座させて頂きますので、ごゆるりとおめでたいお酒、お食事を楽しみながらご歓談下さいませ」


静乃さんから声がかかった。

お弟子さんに促され席を立つと、さゆりさんが私の横にやって来た。


「介添え役を頼まれたの」


優しく微笑む彼女はとても嬉しそうに私の手を取った。

本来なら母親であるお母さんがここにいたと思うと、

ほんの少しだけ胸の奥が痛んだ。


けれど、親族席に視線を向ければ、

父親の席の隣りにはお母さんの写真が飾ってある。

きっと、これも隼斗さんの優しさ。


そう思うと、本当に私は世界一の倖せ者なのかもしれない。