家元の寵愛≪壱≫



父親のリードで扉の中へ足を踏み入れると、

眩い照明に照らされる中、

透き通ったピアノの旋律と

少しハスキーがかった女性の声が降り注ぐ。


「んッ?!」


―――――この曲!!


「静子の好きだった曲だな」

「………ん」



室内に響き渡る美しい女性の歌声。

ゴスペルで謳われる『The Rose』


心の芯まで染み渡るその歌声に再び涙腺が緩み始めた。



1歩ずつゆっくりと歩むトラバーチンのバージンロード。

その左右に見慣れた顔ぶれが視界に入る。



そして―――――――――、


一段高い祭壇の前で足を止め、


「隼斗君、娘を頼みます」

「はい」


父の手によって、最愛の人へと手渡される私の手。

それをとても愛おしそうに受け取った彼。



トイレへ行くと言って姿を消した筈の彼は、

最高のステージで私を待っていた。



沢山の視線を浴びる中、

私は彼の手に引かれて、ゆっくりと祭壇へ足を進める。



幻想的な空間の中、神父様の声が響き渡る。