家元の寵愛≪壱≫



「隼斗さん、ここって……?」

「ん?」



含みのある笑みを浮かべ、私の手を引く彼。

何だかとても楽しそう。


お洒落なレストランかと思ったけど、そうじゃないみたい。


黒いスーツを着た男女が数名、

行き来しながら笑顔で挨拶を掛けて来る。



さゆりさんと訪れたサロンに雰囲気は似てるけど、

独特の香りが違う気がする。


レストランでもサロンでも無い。

だとすると、何なの??



辺りをキョロキョロしていると、


「こんにちは、初めまして。私、当館の責任者をしております、諸岡と申します」


突然、目の前にスラリとした女性が現れた。

私はその人を目にして、一瞬で凍りついた。


―――――――ッ!! この人?!


諸岡さんという責任者の女性は

長い髪をキッチリと纏め上げ、

決して派手すぎない化粧を施し、

上品な笑みを浮かべ、会釈した。


「…………初めまして」


口ではそう言ったものの、初めて会った気がしない。


だって、彼女は……隼斗さんの車に乗り込んだ人だ!!