家元の寵愛≪壱≫



父親の言葉が嬉しかった。


いい歳して親に頼りたくなくて今日まで来たけど、

実際はどうしようもなく不安で

どうしていいのか気持ちが迷子になりかけていた。


だからこそ、気持ちを察してくれる事に

ガチガチに固まってしまった心が癒された気がした。



出来る限りの所まで頑張って、

それでもダメだったら、その時は手を貸して貰えばいい。

………親子なんだから。



「今日も遅くなるのか?」

「ん」

「無理をするのは勝手だが、身体だけは大事にな」

「ん」



親父はそれ以上何も言って来なかった。

だが、それが今は返って有難い。


今はただ、見守っていて欲しいだけだから。














ゆのを里帰りさせて、10日後の朝。


仕事場へ向かう為、車に乗り込むと1通のメールを受信した。

ディスプレイには『ゆの』の文字が。

俺はすぐさまそれを開いた。



すると、