家元の寵愛≪壱≫



「私は……傍に居たいです」

「………」

「隼斗さんの邪魔はしません!!ただ、傍に居るだけでも………ダメですか?」

「ッ!!」


ゆのは今までで1番辛そうな表情をしている。

そうさせているのは俺だ。


俺も本当に辛くてこれ以上見てられない。



俺は意を決して口を開いた。


「迎えに行く」

「へ?」

「今は傍に置いておけない」

「………」

「……迎えに行くから、待っててくれないか?」

「………その言葉、信じていいんですよね?」


ゆのはほんの少しだけ安堵したような表情に。

そんな彼女に俺は無言で頷いた。



今はこれ以上、何も話してやれない。

弁解すればするほど自分の首を絞めかねない。


それを察してか、


「………解りました。隼斗さんが迎えに来てくれると信じて、待ってます」

「……………ごめん」


やっとの思いで口にしたに違いない。

辛く苦しいのに無理して微笑むゆの。


そんな彼女を目にして、心の奥がギュッと重く痛んだ。


全身で彼女を包み込むように

俺はこれ以上無いほどに優しく抱きしめた。