家元の寵愛≪壱≫



「嫌ですッ!!」

「ッ?!」

「私は隼斗さんから離れませんッ!!」



ゆのの瞳はとても力強く、俺を見据えている。

彼女の意志は決して揺るぎないものだと感じた。


けれど、俺もまた……決心したんだ。

―――――今回ばかりは譲れない。



「ごめん」

「ッ?!」

「ゆのとは一緒に居られない」

「………どうして?」

「どうしてって………」


そんな風に切なく見つめるなよ。

俺だって、やっと決心したんだから。

………解ってくれないか?



「ずっと、傍に居てくれるって約束しましたよね?」

「………あぁ」

「私だけを見ててくれるって言ってくれましたよね?」

「…………あぁ」

「なのに………何故?どうして??」

「ッ」


ゆのは俺の腕をギュッと掴んで訴え来る。

これ以上無いほどに悲しい瞳で―――――。


「悪い所があるなら言って下さい!!頑張って努力して直しますから!!」

「いや、そう言う問題じゃないんだ」

「じゃあ、どうしてです?私の何がいけないんですか?」


ゆのは切に俺を求めてくれている。

それが今は苦しい。


本当に俺は至らない男だ。