家元の寵愛≪壱≫



「んっ………ッ!!………はや……と………さんッ?!!」

「ッ!!………ごめん………何でもない」


俺は彼女から顔を逸らすようにして

頬をつたう生温かい雫を手で拭った。


――――ゆのの頬に一粒の雫が。

気付かぬうちに涙が零れていたとは……。


いい大人の男が涙するなんてカッコ悪ぃ。

俺はそんな心境を悟られまいと息を整えると、


「んッ?!」


動揺する俺を背後からゆのが抱き締めた。

何も言わず、ただただギュッと抱き締めるだけ。


そんな彼女の行動が俺の心を刺激する。


……………本当にごめんな、ゆの。

謝っても謝りきれない程の感情が溢れ出して来る。



俺は深呼吸して、ゆっくりと彼女の腕を離し振り返る。


そして―――………



「ゆの、話がある」

「………………はい」



俺の声のトーンで察したのか、

彼女は今にも泣き出しそうな瞳で俺を見上げた。



そんな彼女の両肩を掴んで、