家元の寵愛≪壱≫



「本当は2人きりでお祝いするつもりだったんだけど、ゆのの体調が悪いから、また今度にしような」

「2人きりで……お祝い?」

「あぁ。ゆのを連れて行きたい所があったんだけど…」

「………ごめんなさい」

「いいよ、謝らなくても。風邪はどうにもなんねぇし」


私ってなんてバカなんだろう。

せっかく、彼が色々考えてくれていたのに。


私なんて、プレゼントすら用意してないもの。

はぁぁ……。

ホントに『妻』失格だ。


「ごめんなさい」

「ん、いいよ」

「ホントにごめんなさい」

「ん、だからもういいって」


謝っても謝り足りない。

どう足掻いても日付を巻き戻す事なんて出来ないし。

――――後悔の念に駆られた。


すると、


「ゆのにプレゼントを用意したんだけど、ここじゃ渡せないんだ」

「えっ?」

「さっき言った、連れて行きたいって場所に用意してあるから」

「ッ!?」

「ごめんな」

「……いえ。私なんて、すっかり忘れていたくらいですから」

「ん、ゆのらしくないよな。最近、何かあったのか?」

「へ?」