『すぐ帰る』と言っていたのに
日が沈んだ今になっても帰って来ていない。
余程、あちらの方が楽しいみたいね。
現実に打ちひしがれながらも
それでも諦めきれないでいた。
だって、私は彼の『妻』なんだもの。
ベッドサイドに腰掛けた状態から
パタンと倒れるように横たわる。
身体はまだ全快していないからなのか、
横になると睡魔が襲ってくる。
早く逢いたい。
こんなにも逢いたいと思う事なんてなかったのに。
やっぱり、私以外の女性の存在がそうさせるのかな?
彼が優しく触れる感触を思い出し、
彼が優しく囁いてくれる声音を思い出し、
彼が優しく見つめてくれる眼差しを思い出し、
彼と過ごした幸せな時間を思い出しながら
彼の帰りをウトウトしながら待ち侘びていた。
ふと、頬に触れるヒンヤリとした感覚と
その後にかかる温かな吐息が
私が待ち侘びている人によるものだと教えてくれた。
「……お帰り………なさい」
「………ただいま」



