―――――解っている。
こんな事を聞く女は重いのだと。
だけど、聞かずにはいられなかった。
昨日の女性が脳裏をかすめる。
そんな重いセリフを吐いた私を
困惑の表情で見つめている。
彼に問い詰めてはいけない。
彼の行動を制御してはいけない。
彼を疑ってはいけない。
彼を困らせてはいけないのに、
どうしてもそれが出来そうに無い。
風邪を理由に正気を保てないのではない。
――――――きっと、愛し過ぎて理性がセーブ出来ないんだ。
無意識に彼の袖口をギュッと掴んでいた。
どこへも行かせたくなくて。
こんな事を私がした事なんてないから、
隼斗さんは困惑の表情を浮かべている。
いっその事、嘘でもいいから
『仕事へ行って来る』と言われた方が何倍もマシだったか。
遣る瀬無い想いが募っても、
きっともうどうする事も出来ないんだ。
だって、彼の瞳が
『ごめん』と言っているから。
「……ごめんなさい。気を付けて行ってらっしゃい」
「……ん、ごめんな。すぐに帰って来るから」
「………はい」
私は未練たらたらに掴んでいる袖をそっと手離した。



