家元の寵愛≪壱≫



身体がだいぶ軽くなったように感じて、

ゆっくりと上半身を起こしてみる。


すぐさま隣りを見てみるが、そこに彼の姿は無かった。


どこに行ってしまったの?

もしかして、仕事に行ったのかしら?

そうよね、丸々1日は休めないよね。


心の底では解っていた事なのに、

グッと淋しさが込み上げて来た。


何で私は寝入ってしまったの?

起きていたらずっと彼を見ていられたのに……。


後悔ばかりが募ってしまう。



溜息を零しながら、

乱れた髪を手櫛で直していると



「おっ、もう起きたのか?」

「ッ?!………隼斗さん」

「飲み物持って来たから、飲みたい時に飲んでな」

「……どこかに…………出掛けるの?」


目の前に現れた彼は、仕事着ではなく

外出着のような格好で現れた。


さっきまで着ていた部屋着でない事が全てを物語っている。


「ん、ちょっとだけ出掛けて来る」

「どこに?」

「どこって……すぐそこだから」

「だから、どこ?」