家元の寵愛≪壱≫



今日も仕事の筈なのに普段着姿という事は

もしかして、私のせいでお休みしたの?


「隼斗さん………仕事は?」


掠れ気味の声で尋ねると、


「ゆのが心配で仕事なんて出来るかよ」

「ッ!!////」


彼の言葉がお世辞だとしても嬉しい。

嬉し過ぎるよ。


「仕事は親父に任せてあるから心配すんな」

「………ごめんなさい」


そんなに愛おしそうに見つめられたら、

私、自惚れちゃうよ?

仕事よりも私を優先してくれたと……。



でも多分、お義父様やお義母様が気を遣って

きっと、『私の傍に居てあげなさい』と言われたに違いない。


―――――彼は仕事を最優先する性格だから。


どんなに事情があろうとも、

決して仕事は疎かにしない人だから。


それが、『家元』だと前に聞かされた私。


だからこそ、こうして、

仕事を放棄してまで寄り添ってくれる彼に

心から安堵してしまう。


――――――――昨日の女性は無関係なのだと。



彼の傍に居られる事がこんなにも幸せなんだと

私は改めて実感していた。