「おっ?!ゆの、起きたのか?」
「ッ!!」
隼斗さんが部屋着姿で姿を現した。
そして、手にしていたお盆を床頭台の上に置き
ベッドサイドに腰掛けた。
いつもと変わらない優しい表情で。
「どれどれ……?」
そっと、私の額に手をかざして、
「ん、熱はだいぶ下がったみたいだな。でも、まだ寝てろ?完全に治るまでは部屋から一歩も出るなよ?」
「………」
ひんやりした彼の手は
いつものようにとても優しく、
額から髪へをつたう指先もまたとても繊細に触れて。
こんな何気ない彼の仕草にも
『今だけは私を見ていてくれる』と安心して……。
「ッ?!……おい、どうした?どこか痛むのか?……苦しいのか?」
「………」
突然、涙が溢れ出した。
それを見た彼は動揺を隠せない様子。
私が体調不良で涙しているのだと思って……。
風邪なんて、寝てれば治る。
だけど、心の傷は幾ら寝ても治りそうにない。
頬をつたう涙を拭う彼の手に自分の手を添え、
彼のぬくもりをじっくりと感じていた。



