家元の寵愛≪壱≫



それもそうよね、風邪引いて当然だ。


寒空の中、1時間以上も待っていて

自宅へ帰って来ても、

暖房も付けずそのまま横になったんだから。

しかも、布団も掛けずに……。



痛む腕を動かし、布団の中を覗くと

外出着姿ではなく、パジャマ姿になっていた。


隼斗さんが着替えさせてくれたのかな?



室内は暖かく、加湿器までついている。


今は一体、何時何だろう?


重い頭をやっとの思いで動かし、

壁掛け時計に視線を向けると、午前10時15分。


そりゃあ、明るくて当然だ。



風邪のお陰で脳の回転がかなり鈍っている。


いつもなら飛び起きて母屋に行くのだけど、

今の私にはそんな気力は無い。


それに、昨日の今日で

隼斗さんとどんな顔をして会えばいいの?


まさか、私が尾行してたなんて知らないだろうし。

やっぱり、ここは………知らないフリが1番よね。



溜息まじりに天井を仰ぐと、