家元の寵愛≪壱≫



車で向かった先は、勿論隼斗さんの仕事場。


今日は午後から茶道会館での仕事だとお義母様から聞いている。

だから、私は茶道会館の来客用駐車場の隅に車を停めた。


隼斗さんやお義父様は専用駐車場に停めている。

だから、私がここへ停めてもきっと解らない筈。



茶道会館の敷地内に日本懐石のお店があり、

21時までなら一般の方も出入りは自由。


だから、そんなお客の車に交じり私は車を停め、

隼斗さんの車が見れる場所へ移動した。


隼斗さんの車はかなり目立つからすぐに解った。

駐車場の左奥に停めてある。



私はコートの襟を立て、足踏みしながら

寒さを堪えて彼が出て来るのを待っていた。



およそ、1時間後。

17時を少し回った頃に彼は姿を現した。


稽古着のまま、会館から出て来た。


私は慌てて自分の車に駆け戻った。

急がなくては見失う!!



猛ダッシュで車に乗り込み、

彼の車が守衛小屋を通過するのを見守って……。