家元の寵愛≪壱≫



初めて好きになった人。

初めて心を通わせた人。

初めて私が愛した人。

初めて、初めて、初めて……。


私の『初めて』を全て捧げた愛おしい人。



そんな彼を信じたい。

ううん、心の底から信じてる。

だって、毎朝、あんなに優しい瞳をするのだから。


自惚れていると嘲笑われてもいい。

私を『愛している』と言った彼を信じる。

………そう決めたのだから。



だけど、心の片隅で燻る感情が溢れ出してくる。

彼の気持ちが知りたいと……。








大学は春休みに突入し、

私は自宅で転部入学後に提出予定のレポートを作成していた。



そして、16時を回った頃。


「お義母様、友人の家に行って参ります」

「お夕食は要らないんだったわね?」

「はい。友人宅で用意して下さってるので」

「気を付けて行ってらっしゃいね」

「はい。行って参ります」


お義母様に嘘を吐いて、自宅を出た。