家元の寵愛≪壱≫



お義父様は夕方になれば帰宅する。

お義母様と共に一緒に夕食を取るのだから、

稽古相手はお義父様では無い。


じゃあ、お弟子さん?

幾らなんでもあり得ない。


それじゃあ、1人で稽古してるの?


もう、何が何だか分からないよ。


この数日の間に私は1人考えていた。

彼が『浮気』をしていたとして、

きっと、それには理由がある。


私に女としての魅力が足りないのか。

それとも、私より魅力的な女性に気が向いてしまっているのか。

それとも、マンネリに嫌気がさして、

ちょっとだけ遊んでいるだけなのか。


それとも……―――………

私が妻として、至らな過ぎて飽きられてしまい

距離を置きたくて帰り辛いのか……。


仕事が理由でないなら、

それ相当の覚悟を決めなくては!!



朝から晩まで考えてはみたけど、

私の出せる答えは1つ。


『彼を待つ』………ただそれだけ。


だけど、じっとして待ってはいられない。

どんな状況なのか、それくらい知る権利はあるよね?


私は心に決めていた。