薄暗い寝室の天井をぼんやりと眺め
彼の寝息と鼓動を肌で感じて、
これは『夢に違いない』と
心の中で何度も何度も唱えていた。
体内時計が時を伝えたのか、
4時少し前になると、
むくりと起き出した隼斗さん。
寝ぼけているようにも見えるが、
手元はしっかりと動いている。
下着を手にして、浴室へと向かった。
そんな彼を僅かに開いた瞼の隙間から眺めていた。
シャワーを浴び終えた彼は
手早く稽古着に着替えて、母屋へと向かって行った。
何て声を掛けていいのか分からず、
………挨拶すら出来なかった。
だって、だって……。
ほんの少し前まで彼がいた私の隣りから
夜更けに嗅いだ香りが仄かに漂ってくる。
私をベッドに縛り付け、
鋭利な刃物で串刺しにするかのように。
動きたくても動けない。
姿の見えない誰かに押さえ付けられているようで。



